夕 闇


安息の夜の前には、血のように赤い夕焼けがある。

どうしても、忘れられなかった。
どんなに穏やかな夜の帳が下りようとも、忘れられなかった、血の夕焼けを…。

焼け跡にたった一人残った血の証を、抱きしめるようにして今日の日まで守ってきた老夫婦の思い。
わかっていても、裏切らずにはいられなかった。

湯島天神まで願をかけに行ったと笑う声に背を向け、
医大の前を流れに逆らって通り過ぎる。
後は、空白になった時間をアルコールで埋めるだけ。
あてどなくさまよい歩き、ようやく日の暮れたとき、
自分があれほど疎んじていた父親と同じ道を歩き始めているのだと気づいた。

どこに行けばいい?

酔いつぶれた目には、全ての夕闇がシラを切る。

どこに行けば、いい?


cut by toroさん




−−きれいだな…。
−−野郎と見ても、しょうもねぇけど、な。

 ミナトヨコハマ、暮れなずむ夕景の中で、相棒が笑う。

−−もう少し、付き合えよ。

 腰を上げかけた相棒が、少しいぶかしげな顔をする。
 だが、こいつは、多分、理由を聞かない。
 そのまま黙って、…いや、ああだのこうだの文句をかっ飛ばしながら、それでも、隣にいる。

 勇次…。
 お前なら…、お前となら…、
 血の夕焼けも一緒に歩けるのかもしれない。

 歩いてほしいと思う自分と、歩かせてはならないと思う自分と。
 夕闇の中で、また道に迷う、あの日のように。

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