感 傷

二人かかりで押さえつけられてしまえば、後は奴らの思うがままだった。
三度目に脇腹に入った蹴りで、がくりと膝から力が抜けた。
ずり落ちる体を無理やり引き上げられ、唇を金網が擦る。噛まされた鉄錆の味。

滲んだ視界に映るあの塀の向こうで、怯えた目をしたあいつらが…。
自分たちの尻を拭うこともできないあいつらが、それでも逃げ出すこともできずに…。

…んなこと、どうだって、いい。
笑ってやるさ。
これが終わったら、笑い飛ばしてやる。

だから、さっさと終わらせろよ。
早く…、終わりにして…くれ。

photo by YUKAさん
−−どうした? 署にもどるぞ。

吉井に言われて、大下は、もたれかかっていた金網からひょいと体を起こした。
現場検証もあらかた終わり、後は報告書を上げるだけ。
真っ先に駆けつけた相棒は、銀星会絡みではないとわかった途端、後始末を大下になすりつけさっさと姿をくらましていた。

チームを気取る少年たちと、それに眉を顰めるサラリーマンの単純な諍いだった。
引っ込みがつかなくなった少年の一人が、カッコつけで持っていたナイフを振り回し、偶然それがヒット。青くなった仲間は、少年一人を残して散り散りに逃げた。そして、署に入ったタレコミの電話。

−−…ったく、自首するくらいなら、逃げるなっつーの。
−−おいおい…。
吉井が苦笑する。
−−ああいうやつらのことは、お前が一番わかるんじゃないのか?

わかりたかねぇよ。

父親の顔になった吉井に敬意を表して、大下はそっと嘯いた。

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