|
情念の炎を断ち切るように、乾いた銃声が響く。 一瞬、目の前を遮った背中が妙な形にねじれて、 そのまま崩れ落ちる。 スローモーションのように…。 抱え上げれば、きつく目を閉じたまま痙攣を起こす体。 ほとんど意識を飛ばした状態で、 それでも大下は俺の腕を放さなかった。 撃つな、と…。 |
|
錆び付きかけた鍵をひねると、引きつれた音をたてて扉が開く。 古い本を開いたような…、本棚の奥にしまい忘れた本を開いたような匂いがして…。 そこには、うち捨てられたように残ったプレーヤーだけが、主の帰りを待ちわびていた。 それだけが、そこに人の住んでいた証のように…。 −−LP一枚聴き終えるまでに、この恋を終わらせよう。 …んなこと言ったって、針が飛んだらどうすんだよ。 …ったく、ムードのカケラもねぇ野郎だな。 悪かったな。どうせ俺はガキだよ。 半分は本気で臍を曲げる相棒に、俺も半分辟易する。 だが、後の半分は、包帯の白さがまぶしくて目を逸らしてしまう俺と、それがわかってわざと挑発する相棒の、きわどい駆け引き。 あの男の好きだったブルースが流れる。 相棒の追いかけた女(ホシ)が、俺の抱えた山とクロスした。 俺は譲らず、いつもの通りの口論をして、いつも通り相棒が折れた。 たった一つ、いつもと違ったのは、俺が相棒の名を呼ばなかったこと。 最後まで、呼べなかったこと。 似合わねぇこと、してんじゃねぇよ。 相棒の声が苦く残った。 あの男の好きだったブルースが流れる。 うるさいほど饒舌だった相棒が、口を閉じた。 窓の景色を見るようにして、さりげなく背を向ける。 らしくない気遣いに、俺はかすかに笑みを漏す。 遠い追憶の彼方。セピア色の景色に封じ込めた男の呟き。 −−LP一枚聴き終えるまでに、この恋を終わらせよう。 と、ラスト近く、見事に針が飛んだ。 without your eyes without your eyes without your eyes リフレインに、そら見ろと背中が苦笑する。 俺は黙って針を上げた。 最後まで聴かねぇのかよ? もう、十分さ。 そ? 大下の隣に立つと、ガタつく窓を小さく開けた。 目の前に差し出されるラーク。 微風を片手で遮り、くわえタバコのヤツが笑う。 LP一枚聴き終えるまでに、などとは、間違っても言わない。 隣にいるだけで、いちいち癇に触る。 それでも…。 勇次。 この、最高のわからず屋に、 今日のところは…。 乾杯。 |